センパイの嘘つき


改札を抜けて、歩く。


「…なんでいるんですか」


「ちゃんと、送り届けないと一緒に帰ってる意味ないでしょ」


先輩の優しさが、苦しい。


私の汚いところが、どんどん浮き彫りになる。


いっそ、突き放すことができたらいいのに。


そう、思うのに、先輩の声とか、仕草とか、表情が、頭から離れない。


それを引き剥がすのは、きっと、もっと苦しい。


どうしてこんなに、先輩のことばかりなんだろう。

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