センパイの嘘つき
「彼は、サッカー部に入ってたんです」
誰にも話したことがないのに、不思議と言葉は自然にでてきた。
サッカーが強かった彼は、先輩を差し置いてチームのキャプテンになった。
彼が嬉しそうだったから、私も嬉しかった。
でも、良く思わない先輩がいて。
彼は、その先輩に目をつけられてしまった。
最初は、かすり傷だった。
彼は練習で転んだ、と笑った。
腕に、アザを見つけた。
彼はどこかでぶつけたんだ、と苦笑した。
目が、不自然に腫れ上がっていた。
何を聞いても、彼は大丈夫、としか言わなかった。
先生や、他の先輩に相談したけど、誰も取り合ってくれなかった。
体の傷は増え、財布がなくなることも何度かあった。
私は、なにもできなかった。