センパイの嘘つき
小さなことから


「柚月ー!お風呂入っちゃって!」


下から声が聞こえてきて、私は時計を見る。


いつのまにか9時になっていた。


私は制服のままでベッドの上にいる。


頭がぼーっとする。


先輩に、抱きしめられた。


そして私も、震える手で、抱きしめ返した。


スマホを開く。連絡先には、登録者数が少ない中に「柳 悠人」の文字がしっかりとあった。


私は枕に顔をうずめる。


あんなに近くに人の体温を感じたのは、いつぶりだろう。


心の中で、もう1人の自分が、私を見つめている。


『怖かった?気持ち悪かった?嫌だった?』


私は、なにも言えない。


肯定も、否定もできない。

< 67 / 181 >

この作品をシェア

pagetop