センパイの嘘つき
小さなことから
「柚月ー!お風呂入っちゃって!」
下から声が聞こえてきて、私は時計を見る。
いつのまにか9時になっていた。
私は制服のままでベッドの上にいる。
頭がぼーっとする。
先輩に、抱きしめられた。
そして私も、震える手で、抱きしめ返した。
スマホを開く。連絡先には、登録者数が少ない中に「柳 悠人」の文字がしっかりとあった。
私は枕に顔をうずめる。
あんなに近くに人の体温を感じたのは、いつぶりだろう。
心の中で、もう1人の自分が、私を見つめている。
『怖かった?気持ち悪かった?嫌だった?』
私は、なにも言えない。
肯定も、否定もできない。