センパイの嘘つき


「私、なんにも持ってないですよ。先輩の期待に応えられるものなんて」


なにも、あげられない。


「俺が君のこともっと知りたいと思うんだけど、それだけじゃダメ?」


困ったように、必死にあなたは言う。


「…っ私、重いですよ、めんどくさいですよ、触れませんよ、普通の女の子みたいに、できませんよ」


目が熱い。喋る唇が震える。


「柚月ちゃんは、普通の女の子だよ」


「…なんで、そんなこと言うの…」


先輩の優しい声に、心がぐちゃぐちゃになる。自分が、わからなくなる。


「辛いことがあったら、聞くよ。眠れなかったら、電話して。いつでも俺は電話に出るし、いつでも相手になる。」


「…暇なんですか、バカなんですか」


「うん、だから」


何かが、私の中で、溶けた。


それが雫となって、目から溢れる。


「柚月ちゃんは、1人じゃないよ。いつでも泣いていいんだよ」


壊れてた何かが、今、元に戻ろうとしている。


そんな気がした。

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