センパイの嘘つき


「行ってきます」


玄関のドアを開けると、外は昨日よりも冷え込んでいて、私はマフラーに顔を埋めた。


ブー、ブー、とポケットに入れていた携帯が震える。


手にとって、表示を確認して驚く。


「…先輩?」


「おはよ、柚月ちゃん」


「…朝から何の用ですか」


先輩からの電話が、実は少し嬉しい。それなのに、どうしても素直になれない。


「周りに変な奴はいない!?ちゃんと女性専用車両に乗るんだよ」


真剣な先輩の声に思わず笑みがこぼれる。

< 74 / 181 >

この作品をシェア

pagetop