センパイの嘘つき
「行ってきます」
玄関のドアを開けると、外は昨日よりも冷え込んでいて、私はマフラーに顔を埋めた。
ブー、ブー、とポケットに入れていた携帯が震える。
手にとって、表示を確認して驚く。
「…先輩?」
「おはよ、柚月ちゃん」
「…朝から何の用ですか」
先輩からの電話が、実は少し嬉しい。それなのに、どうしても素直になれない。
「周りに変な奴はいない!?ちゃんと女性専用車両に乗るんだよ」
真剣な先輩の声に思わず笑みがこぼれる。