センパイの嘘つき
「あの子ね、大好きで大好きでたまらない彼氏に振られちゃったんだって。友達に、取られて。それで、慰めて欲しいって言われたんだ」
私は耳を疑う。
「先輩は、キスして欲しいって言われたらキスするんですか?」
「それでその子が苦しみから解放されるなら、するよ」
「いつも、そうなんですか?」
「そうだよ」
先輩がしたいからじゃない。先輩がその子のことを好きだからじゃない。
傷ついた女の子の傷を、先輩は舐める。
そんなの、じゃあ。
「…じゃあ、先輩の傷は?誰が癒すの?」
先輩は、私の声に目を見開く。
だって、そんなのあんまりだ。