センパイの嘘つき


「あの子ね、大好きで大好きでたまらない彼氏に振られちゃったんだって。友達に、取られて。それで、慰めて欲しいって言われたんだ」


私は耳を疑う。


「先輩は、キスして欲しいって言われたらキスするんですか?」


「それでその子が苦しみから解放されるなら、するよ」


「いつも、そうなんですか?」


「そうだよ」


先輩がしたいからじゃない。先輩がその子のことを好きだからじゃない。


傷ついた女の子の傷を、先輩は舐める。


そんなの、じゃあ。


「…じゃあ、先輩の傷は?誰が癒すの?」


先輩は、私の声に目を見開く。


だって、そんなのあんまりだ。

< 79 / 181 >

この作品をシェア

pagetop