センパイの嘘つき


「さすがに混んでるね…」


ジェットコースター付近はこのテーマパークのイチオシということもあって人でごった返していた。


前から歩いてくる人にぶつかって、思わず転びそうになる。


「柚月ちゃん、危ないから」


そう言ってはい、と手を差し出してくる先輩。


…でも、私は


「先輩、私…」


「柚月ちゃん、大丈夫だよ」


キラキラ光る先輩の金髪。キラキラ輝く先輩の笑顔。


なんだか大丈夫な気がして、指先だけを、少しだけ握る。


先輩のあたたかい手。男の人の手なのに、不思議と安心する。

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