センパイの嘘つき
「…柚月ちゃん?」
先輩に覗き込まれて、私はハッとする。
「大丈夫?顔色良くないよ」
「いえ!あの、ほんとになんにも…」
先輩の真剣な眼差しに、全て見透かされている気分になる。
「…柚月ちゃん、出ようか」
突然先輩はそう言うと列から出ようとする。
「ちょっと…先輩!大丈夫ですってば!」
せっかく、先輩が楽しみにしてたのに…
「いいから、来て」
先輩の有無を言わさぬ口調に、私は仕方なくついていく。
少し歩いて、先輩は私をベンチに座らせた。
「あの…先輩」
「飲み物買ってくる」
それだけ言って、先輩は背中を向けてしまう。
…絶対怒ってた。
私はつくづく自分に嫌気がさす。どうして私はいつもこうなんだろう。
どうして、誰かを傷つけることしかできないのかな?
俯く私の目の前にペットボトルのお茶が差し出される。
見上げると先輩が「飲んで」と真顔で言った。