センパイの嘘つき
私は言われた通り一口だけ飲む。
カラカラだった喉が潤って、固まってた体がほぐれる。
先輩はしゃがんで、私の目線に合わせた。
「気分はどう?だいぶ良くなった?」
私は小さく頷く。
「先輩…私…」
「俺がなんで怒ってるかわかる?」
先輩の声に、私はワンピースの裾をぎゅっと握り締める。
「…せっかく、先輩がジェットコースター楽しみにしてたのに…」
「あのさ、柚月ちゃん、バカなの?」
予想外の言葉に目線を上げると、先輩と目が合う。
その顔は、いつも通りの優しい顔だった。
「俺がそんな子供っぽいこと思うわけないでしょ?俺が怒ってんのは、柚月ちゃんが本当のこと言ってくれなかったからだよ」
「…え?」
「絶叫系苦手だって言ってくれたら、他のにしたのに」
ふわり、と笑う先輩に、なんだか泣きそうになる。
「あー、でも俺がすげえはしゃいでたから言いづらかったよね?ごめん、気遣わせたね」
「ちが…!私が、先輩に楽しんで欲しかったから…!」
こんな風に、謝らせたかったわけじゃないのに。
「…私、うまくできなくて…ごめんなさい」
私じゃなかったら。ここに来たのが、私とじゃなくて、他の人とだったら。きっと、先輩はもっと楽しめた。
「だからさ、柚月ちゃんはバカなの?」