センパイの嘘つき
「もしもし?」
電話の相手は、女の人だ、と小さく聞こえてくる声で分かった。
「…どうしたの?何があったの?」
先輩の声が、優しい声になる。
女の人の声は、取り乱していて、泣いていた。
私はなんだか嫌な予感がして、ぎゅっと手を握りしめる。
「…うん、わかった」
先輩は携帯を耳から離し、困ったように笑う。
「ごめん、柚月ちゃん、俺行かなきゃ」
…また頼られてるんだ。傷ついた女の子から。
駄目だ、と思った。この人を行かせたら駄目だ。
そんな風に笑わないでよ。