センパイの嘘つき


朝の満員電車はやっぱり慣れない。


特に女性専用車がないときはなおさらだ。


「俺がいてよかったーってちょっとは思ってる?」


私を守るように立つ先輩の顔はどこか誇らしげでムカついたけど、ホッとしている自分がいる。


「調子乗らないでください」


「いって!ごめんごめん」


仕返しに先輩の足を踏む。


ありがとうの1つも言えない私は、やっぱり可愛くなくて、嫌な女だ。


それなのに、なんでそんなに嬉しそうに笑うの?


胸の痛みは、消えない。

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