天ヶ瀬くんは甘やかしてくれない。



「なんでも……ない」

一度言葉にしてしまったものを取り消せたらいいのに。

いったい、いつになったらわたしたちのカンケイはほんとの恋人同士になれるんだろう。

これ以上を求めちゃいけないことは頭ではわかっているはずなのに。

いつまでたってもこんな状態なのかな。


最初はそれでもよかったと思ったけど、自分の中の独占欲や嫉妬の感情がどんどん大きくなってきて、自分だけ見てほしい、自分だけのものになってほしいって思ってしまう。

それを伝えることができないもどかしさ。


……まったく、ほんとに厄介だ。


「もも、俺のほう見て」

バカなことを考えていたら、頬に天ヶ瀬くんの手が添えられて、自然と目線が上がる。


嫌いになれたら……いいのに。
この手を振りほどくことができたらいいのに。

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