天ヶ瀬くんは甘やかしてくれない。
「い、痛かった……」
キリッと睨んでみれば。
「そんな顔赤くして言われても逆効果なんだけど」
「なっ……!」
自分の手で頬に触れたら、熱い。
きっと天ヶ瀬くんの言う通り、顔は真っ赤だ。
「もものそーゆー顔見ていいのは俺だけって覚えときなよ」
嫉妬と独占欲と甘さが混じって……。
どんどんはまっていく、止められそうにない、抜け出せそうにない。
……そう、このときはまさか自分から天ヶ瀬くんを手放すことになるなんて、思ってもいなかった。