天ヶ瀬くんは甘やかしてくれない。
天ヶ瀬くんはわたしを選ばない。
━━ピピッ…!
「……37.5か」
手元にある体温計を見て、そんなつぶやきが漏れた。
朝、珍しく早くに目が覚めて、身体のだるさがあった。
そして、熱を計ってみれば、体温計に示される微熱の体温。
もともと平熱は高いほうだから、これくらい大したことはない。
とりあえず身支度を済ませていると、いつもより早い時間に愁桃が部屋に来た。
……最悪だ。もう送り迎えはいらないって言ってあるのに、平気で迎えに来てるではないか。
「珍しく早く起きてんのな」
「愁桃に起こしてもらわなくても自分で起きれるから。だから、毎朝こうやって来てくれなくてもいいって……」
「天ヶ瀬になんか言われたんだろ?」
「っ、」
「俺はこれからも、ももと変わらず接していくつもりだから。アイツが何か言ってたって俺は知らねーから」
……自分勝手。
って、それはわたしのことか。