天ヶ瀬くんは甘やかしてくれない。
そのまま、先生からもらったプリントを一つの机の上に運んでくれた。
「あの、天ヶ瀬くん?」
「ん、なに?」
「もし先に帰りたかったら帰っていいよ?」
ほんとは一緒にいれるの嬉しいけど、天ヶ瀬くん帰りたさそうだし。
きっと、こう言えば天ヶ瀬くんは
「あーそう。じゃあよろしく」って帰って行くんだろうなって。
そんなことを考えていたら。
「いいよ、俺も日直だし」
予想外な答えが返って来た。
「面倒なこと嫌いなのに?」
わたしの発言に少し驚いた顔を見せたかと思えば。
「へー、俺のことよく知ってんね。あんま喋ったことないのに」
わかるよ。
好きな人のことくらい。
そんなこと口が裂けても言えないけど。