天ヶ瀬くんは甘やかしてくれない。
……こっちは病人だっていうのに。
なんとか倒れないようにしようとするけど、なんだかクラクラする。
そのまま、壁に手をつこうとした。
「……っと、あぶな」
後ろから聞こえてきたそんな声とともに、身体が声の主のほうに引き寄せられた。
力強い腕がしっかり、わたしの身体を支えてくれる。
大好きな人の声や、抱きしめられる感覚はボケッとした意識の中でもはっきりわかってしまう。
「あま……がせくん。助けてくれたんだ」
振り向くと天ヶ瀬くんがいた。
「目の前で倒れそうになってるから」
天ヶ瀬くんがいてくれてよかった。
いなかったら、下手したら床に身体を打ちつけていたかもしれない。
「あ、ありが……」
わたしがお礼を言ってる最中だっていうのに、スッと腕の力を緩めた。