天ヶ瀬くんは甘やかしてくれない。
そのまま身体をくるりと回されて、天ヶ瀬くんのほうを向いた。
いちばんに視界に入ってくるのは天ヶ瀬くんのネクタイ。
天ヶ瀬くんは背が高くて、わたしはチビだから、お互い向き合っていても、わたしが見上げないと顔が見えない。
……はずだったのに、すぐにきれいな顔が視界に飛び込んできた。
わたしの背の高さに合わせて、かがみこんで、首を少し傾けながらわたしの顔を覗き込む。
びっくりして、思わず一歩後ろに引いたけど、それを阻止するためなのか、気づいたら天ヶ瀬くんの腕が腰に回ってきていた。
「ち、近いよ……っ!しかもみんな見てるし…!」
教室の扉は開いたままで、中にいるクラスの子たちから見られているのがわかる。
「そんな気にならないけど」
「いやいや、もっと気にし……っ!?」