天ヶ瀬くんは甘やかしてくれない。
一瞬、キスされたのかと思った。
教室の中からは悲鳴のような声も聞こえてきた。
ごつんと、おでことおでこがぶつかって、お互いの距離が近すぎて声が出なくなった。
これはある意味キスするよりも恥ずかしい気がする……!
目を開けているせいで、いつもより余計ドキドキする。
そんなわたしとは正反対にいつも通り平常運転の天ヶ瀬くん。
そして、何事もなかったかのようにわたしから離れたかと思えば。
頭を軽くポンポンと撫でられて
「無理すんの禁止だから」
と、言ってあっさり自分の席にいってしまった。
な、なんだったんだいったい。
無駄にドキドキした分を返してもらいたい。
あまりに自然に立ち去っていくもんだから、何が起きたのか、どうしてあんな行動をとったのかがわからなかった。