天ヶ瀬くんは甘やかしてくれない。
「面倒かけちゃってごめんなさ……」
これで何も言わなかったら、そのままにしておこうと思ったのに。
「……たまには人に甘えてもいーんじゃないの?」
わたしの声を遮って伏せたまま、そう言った。
そして少し顔を上げて。
「早く食べれば?時間なくなるけど」
またすぐに伏せてしまった。
ズルイなぁ…こうやって、たまに優しい一面を見せてくるんだから。
結局、自分が買ってきたことは言わないんだもん…。
「あ、ありがとう。急いで食べるね」
さっきまで気分悪かったけど、天ヶ瀬くんの優しさのおかげで、少し元気になれた気がした。
しかし
気持ちは元気になれても、身体はどうもそうはいかなくて。
「はい、じゃあ授業始めまーす」
午後の授業が始まった。
身体はますますだるくて、良くなりそうにないのに、そんな中頭を使う数学の授業なんて災難すぎませんか…。