天ヶ瀬くんは甘やかしてくれない。
「けど、そんな気遣ってくれなくていいよ。俺も今日暇だし」
「そっか」
なんだ、今日はあの彼女と帰ったりしないのかな。
そんなこと聞けるわけもないけど。
そのまま一つの机を挟んで、お互い正面で向き合って座った。
机一つ分の距離で天ヶ瀬くんがいる。
お互い身を乗り出せば、その距離がゼロになりそうなほど近い。
この近さにドキドキしてる鼓動を聞かれないかどうか心配している間にも
天ヶ瀬くんは作業を始めた。
はぁ、わたしだけかぁ。
こんな風にドキドキして、一緒にいれるのが嬉しいのは。
天ヶ瀬くんからしたらわたしと一緒にいれても何にも嬉しくないもんね。
漏れそうになったため息を抑えた。