天ヶ瀬くんは甘やかしてくれない。
「浅葉さん?」
この先生は、「わかりません」じゃ済ませないタイプの人だから厄介。
とりあえず、黒板の前まで行こうとするけど、頭がクラクラして立てそうにない。
どうしよう……って、軽くパニックを起こしていると。
ガタンっと後ろの席から何か音がして、わたしの横をすり抜けて、黒板に向かっていく人が1人……。
もう……また、そうやって助けてくれるんだから……嫌いになれないんだよ。
なんで…わたしのためにそこまでしてくれるの…?
「あら、わたしが指名したのは浅葉さんなんだけど、天ヶ瀬くん?」
先生の問いかけを無視して、わたしの代わりに黒板の問題をスラスラっと解いた。
そして。
「あ、そーだ先生。俺と浅葉さん今からサボるんで」
なんで堂々とサボる宣言しちゃってるの。しかも先生に向かって。
「ちょっと、何言ってるの天ヶ瀬くん!今は授業中よ?」
またしても先生を無視して、わたしの席にやってきて。