天ヶ瀬くんは甘やかしてくれない。



天ヶ瀬くんがそう言うと、先生は保健室に行くことを許してくれて、そのまま教室を出た。

廊下に出ると、風が吹いて少し冷たくて気持ちいい。


「天ヶ瀬くん…?」

「なに」


「朝から調子悪いってこと気づいてくれてたの…?」


幼なじみの愁桃だって、いつも一緒にいる花音だって気づいてくれなかった。

それに、今日天ヶ瀬くんと話したのは朝のあの時だけ。

それだけで、わたしの体調のことに気づいてくれたのかな。


「朝ももが倒れそうになったとき身体触ったら熱かったから」

「そんな一瞬で…?」


「いつもより熱かった気がしただけ」

「っ……」


ほんの少しの変化に、そうやって気づいてくれるなんて……。

やっぱり天ヶ瀬くんの優しいところは昔の出会ったときから変わってないんだって思った。

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