天ヶ瀬くんは甘やかしてくれない。



目の前の光景に驚いた。

1人の女の子が、いきなり『ゆづくん』と名前を呼びながら、天ヶ瀬くんの胸に飛び込んできたのだから。


いきなりのことで、天ヶ瀬くんはその子を受け止めるために、繋いでいた手を離した。

まるで、一瞬でわたしの手から奪われてしまったような……そんな感覚に陥ってしまった。


「……は、なんで唯乃がいんだよ」

天ヶ瀬くんの表情はとても驚いているようで、

声色が明らかにいつもと違った。


「昨日ね日本に帰ってきたの。1番にゆづくんに会いたくて学校来ちゃった」


天ヶ瀬くんが呼んだ、唯乃って名前。
きっと、この学校の子ではない。

だけど、天ヶ瀬くんのことをゆづくんなんて呼ぶってことは、2人の仲はそれなりに深いことはわかる。

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