天ヶ瀬くんは甘やかしてくれない。
2人のやり取りを聞いていると、やっぱり昔からの仲だっていうのはわかる。
きっと、わたしの知らない天ヶ瀬くんをこの子は知ってるに違いない……。
「ってか、今さら帰ってきて俺になんか用?」
「えぇ、冷たいよゆづくん!」
さっきまで、驚いた顔をしていたのに、今は不満そうな顔をしている天ヶ瀬くん。
むしろ、早く離れたがっているように見える。
それと声も少しだけ、いつもより怒りが混じっているような気がした。
気のせいかもしれないけど……。
多少冷たくされても、唯乃さんは天ヶ瀬くんから離れたりしない。
わたしがいるっていうのに、お構いなしで天ヶ瀬くんの腕にギュッとしがみついている。
「別に冷たくないし。ってか、俺この子送って帰るから」
天ヶ瀬くんがそう言うと、唯乃さんの目線がわたしのほうに向いた。