天ヶ瀬くんは甘やかしてくれない。



黙々と何も話さず、ホッチキスの音がパチっと止まる音だけが教室に響く。


そんな中たまたま、プリントを取った手が重なって


「あっ」

わたしが声を上げたと同時に、視線が絡み合った。


「ご、ごめっ……」


そのまま、手を引こうとしたのに。


「っ、」


なぜかそれを許してくれなくて。
ギュッと握られてしまって。


わたしの手よりもずっと大きくて、
しっかりしている男の子の手…だ。


変なの

何も喋らないで、ただ見つめられて、手を握られてるだけなのに

こんなにドキドキしてるなんて。



「手ちっさいね」

「へ……?」


そんなことを言いながらわたしの手をジーッと見つめて


「しかも柔らかい」

指をツーッとなぞられた。

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