天ヶ瀬くんは甘やかしてくれない。
「へぇ……。ゆづくんの彼女さん?」
「そうだけど」
あまりいい顔はされていない。
敵対心のようなものをむき出しにして、こちらを睨んでいるようにも見える。
直感だけど、この子の性格はあまりいいものではないんじゃないかと思ってしまった。
「ふーん。ゆづくんの彼女さんねぇ」
すると、天ヶ瀬くんから離れてわたしの前までやってきた。
そして、わたしの手をギュッと握った。
「はじめまして、ゆづくんの幼なじみの戸羽唯乃です。お名前聞いてもいい?」
変なの……。さっきまで怖い顔してこっちを見ていたくせに、今はキラキラした笑顔でこちらを見ている。
普通なら可愛いと思う笑顔が、なぜか怖く感じてしまう。
思わず一歩後ろに下がってしまい、声が出ない。