天ヶ瀬くんは甘やかしてくれない。
そのまま、グラついたけど天ヶ瀬くんがとっさに支えてくれた。
「唯乃、悪いけどその話またあとにしてくれる?今はこの子の身体のほうが大事だから」
だんだん意識がぼんやりしてきたけど、天ヶ瀬くんが幼なじみの唯乃さんのことより、わたしの体調のことを気遣ってくれている……。
ほら、やっぱり優しいんだから…。
そのまま、天ヶ瀬くんがわたしの身体をふわっと抱き上げて、唯乃さんの前から立ち去ろうとした。
だけど。
「なにそれ……わたしよりそんな子選ぶわけ?」
ボソッとそんな声が聞こえたかと思えば。
「ゆづくん。嫌だよ、わたし1人にされるの」
今度は、涙目になって、天ヶ瀬くんの腕をつかんで、すがり始めていた。
「だから、あとでちゃんと連絡する……」
「やだ、今じゃなきゃ嫌。今すぐ唯乃をゆづくんの家に連れて行って」