天ヶ瀬くんは甘やかしてくれない。



そのまま、グラついたけど天ヶ瀬くんがとっさに支えてくれた。


「唯乃、悪いけどその話またあとにしてくれる?今はこの子の身体のほうが大事だから」


だんだん意識がぼんやりしてきたけど、天ヶ瀬くんが幼なじみの唯乃さんのことより、わたしの体調のことを気遣ってくれている……。

ほら、やっぱり優しいんだから…。


そのまま、天ヶ瀬くんがわたしの身体をふわっと抱き上げて、唯乃さんの前から立ち去ろうとした。

だけど。


「なにそれ……わたしよりそんな子選ぶわけ?」

ボソッとそんな声が聞こえたかと思えば。


「ゆづくん。嫌だよ、わたし1人にされるの」


今度は、涙目になって、天ヶ瀬くんの腕をつかんで、すがり始めていた。


「だから、あとでちゃんと連絡する……」

「やだ、今じゃなきゃ嫌。今すぐ唯乃をゆづくんの家に連れて行って」

< 132 / 327 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop