天ヶ瀬くんは甘やかしてくれない。
そんな中、さらに頭を混乱させる出来事が起こる。
「もも!」
少し遠くから聞こえてきたこの声を聞いて少しだけ安心した。
それと同時になぜこのタイミングでこいつは現れるんだと、タイミングの悪さを呪いたくもなった。
「しゅ……うと」
慌てた様子で、こちらに向かって走ってきている愁桃の姿。
きっとわたしが熱を出して倒れたことを聞いて心配して来てくれたに違いない。
「大丈夫か!倒れたって聞いて、熱もあるって聞いて心配した。ごめん、朝気づいてやれなくて」
愁桃は……必ずこうやってわたしを一番に選んでくれるのに……。
天ヶ瀬くんは違う……わたしを選んでくれないのだから。
さっきの天ヶ瀬くんの優しさに少しでも浮かれていた自分がバカみたいだ。