天ヶ瀬くんは甘やかしてくれない。
直感で思った。
慣れてるって。
きっと、誰にでもこんなこと言ってる。
だから、何も言わずにゆっくり手を引いた。
「触られるの嫌だった?」
嫌だったと言えば嘘になる。
好きな人に触れられて嫌なわけがない。
「天ヶ瀬くんって誰にでもこーゆーことしてそうだから」
あ、言っちゃった。
それは自分の中でしまっておこうと思ってたのに口に出してしまった。
すると、そんなわたしを見てポカーンと口を開けて、
それはもう驚いた様子で。
「へー、けっこー毒吐くんだね。大人しい子だと思ってたけど」
大人しい子?
そんなわけないじゃん。
「わたし天ヶ瀬くんが考えてるほどいい子じゃないから」