天ヶ瀬くんは甘やかしてくれない。
たった数日会っていないだけなのに、寂しさを感じてしまうわたしはなんなんだろうか……。
天ヶ瀬くんはわたしのことより幼なじみのほうが大事なのに……。
あぁ、やだ。
またこうやって、自分の中の醜い感情がブワッと湧き上がってきてしまう。
教室の扉の前で開けるのを躊躇っていると。
「あれー、ももちゃん。久しぶりじゃん、おはよ」
「あ、星川くん…おはよ」
音楽を聴きながら、こちらに歩いてきて、イヤホンを耳から外してわたしに声をかけてきた。
「どーしたの?そんなところで突っ立って。教室入んないの?」
「え、あっ……」
開けるのを戸惑っているわたしにお構いなしに、ガラッと扉を開けてしまった星川くん。
思わず自分の席のほうから目をそらしてしまった。
もし、天ヶ瀬くんがいたら……
そう思うと、目を合わせたらどうしたらいいかわからない。