天ヶ瀬くんは甘やかしてくれない。
だったら、その威圧的な感じやめてよって言いたいところだけど、
そんなこと言ったらそれこそもっと
何か言われるんじゃないかと思って口にはしなかった。
「それで、わたしに用って」
緊張して喉が異常なまでに渇く。
それを潤すために、水をゴクッと飲んだ。
「じゃあ、はっきり言わせてもらうけど」
な、何を言われるんだろう…。
不安で水が入ってるコップを持つ手に思わず力が入ってしまう。
「ゆづくんと別れてほしいの」
少し予想はしてた。もしかしたら、そんなことを言われるんじゃないかって。
動揺を見せないように、コップを静かにテーブルに置いた。
だけど手が震えて、コップを倒してしまった。
「あ……」
やってしまった……。
テーブルにコップが転がり、水がこぼれた。
そんなわたしの様子を見て
「へぇ、動揺してるんだ?」
クスッと笑いながら、テーブルの溢れた水を拭いた。