天ヶ瀬くんは甘やかしてくれない。
惑わされて、錯覚させられて。
唯乃さんと話をしてから、数日後。
天ヶ瀬くんがいつもどおり登校してきた。1週間ぶりくらいだろうか……。
久しぶりに顔を見て、ホッとした。
もしかしたら、このまま会えなくなってしまうんじゃないかと思っていたから。
そんなことあるわけないのに。
「おー、佑月。久しぶりじゃん」
天ヶ瀬くんが席に着くと、星川くんがすぐに声をかけていた。
「……あー、久しぶり」
いつもと変わらない声。
だけど少し疲れているようにも感じる。
「お前ここ最近どーしたんだよ。急に休むし、連絡取れねーし」
「……まあ、いろいろあったから」
「そのいろいろって何だよー。あ、さてはももちゃんに言えないことかー?」
会話の中に自分の名前が出てきて、ドキッとした。
天ヶ瀬くんの前の席だから、2人の会話が聞こえてしまう。