天ヶ瀬くんは甘やかしてくれない。



片手で器用にわたしの手首をおさえつけながら、ブラウスのボタンに手をかけられているのがわかる。


「んっ、ま……って……」


キスで口を塞がれて、言いたいことを言わせてくれない。

こんなに強引な天ヶ瀬くんは初めてだ……余裕がなさそうで、今にもわたしの全てを奪ってしまいそうで……。


そして、ようやく唇を離したかと思えば……。

艶っぽい表情でわたしを見下ろして。


「……なんで、俺以外の男見よーとするの?」

「っ……」


やめて…そんな独占欲みたいなの出さないで…。

キスで熱を持った自分の身体と、火照る頬と、自然とうるんだ瞳。


そんなわたしにさらに迫って。


「ももの全部、俺だけに見せてよ」


甘い誘惑にくらくらする……。


そんな風に惑わしてこないでよ……。
錯覚しちゃうから。


わたしに少しでも気持ちがあるんじゃないかって……そんな淡い期待を抱かせないでほしい。

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