天ヶ瀬くんは甘やかしてくれない。

余裕がないのか、今にも止まりそうにない天ヶ瀬くんをどう抑えたらいいのか、わからない。


そして、ついに何も言わないわたしにしびれを切らしたのか。


「……何も言わないなら、無理やりにでも俺のものにするよ」


そう言って、またキスをする。
だけど、さっきよりも優しく大切に、包み込むようにしてくるから……。


もう、どうにでもなってしまえばいいと思った……。


だけど。


唯乃さんの存在を思い出し、ハッと我に返る。

違う……こんなことしちゃいけない。


もし、ここで天ヶ瀬くんのものになってしまったら……もう引き返せなくなる。

好きって気持ちが溢れてきてしまう。


そして同時に襲いかかってくる罪悪感。あの唯乃さんの傷を思い出すと、そんな感情が出てくる。