天ヶ瀬くんは甘やかしてくれない。
天ヶ瀬くんのことが好きな女の子たち、付き合った女の子たちを心のどこかでバカにしていた自分がいた。
遊びなのに、好きとか伝えて、それでオーケーもらって舞い上がってバカみたいって。
どうせすぐに別れるのに。
だけど、今のわたしはその彼女たちよりもどこまでも惨めだ。
だって、わたしは気持ちを伝えるチャンスを今この瞬間、自分で潰してしまったんだから。
「………」
「………」
しばらく、無言の空間が続く。
わたしの言葉に全く動揺することがない天ヶ瀬くん。
まあ、そうだよね。
いきなりこんなふざけたこと言われて。
ましてや、そんなに話したこともないクラスメイトのひとりから。
無言のこの空間がつらくて、再び作業を開始しようとした時だった。