天ヶ瀬くんは甘やかしてくれない。



***


支度を終えて、学校に向かう。

その途中。


「ん」

「え?」


愁桃が急に立ち止まって、こちらに手を差し出してきた。

な、何かよこせと言われてる?
頭にはてなマークを浮かべていると。


「あー、もう!普通わかるだろーが!」と、恥ずかしそうにしながら、頭をガシガシかいて。


空いていた手を握られた。


「へ……、手繋ぐの?」

「俺が繋ぎてーんだよ」


ギュッと握って、離さない。


「照れてるの?」

「は、いや別に照れてねーし!」


いや、その慌てた反応である程度わかるし。

たぶん、こういうこと女の子にしたことないから恥ずかしいし、照れてるんだろうなぁ……。


「ふふっ、照れてるんだ」

「ば、バカ……ッ、俺だって好きな女と手繋ぐだけで緊張するんだよ!」

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