天ヶ瀬くんは甘やかしてくれない。
「ふーん、面白いじゃん」
「え?」
頬杖をつきながら、ジーッとわたしを見つめて。
ニヤッと片方の口角が上がっているのがわかる。
「そんな風に言われたのはじめて」
「だろうね」
天ヶ瀬くんにこんなこと言う女子なんかいるわけない。
わたしだってほんとならこんなこと言うつもりなんかなかったし。
そう。
だから、次に天ヶ瀬くんから発せられた言葉に耳を疑った。
「んじゃ、今日から彼女ね」
は……?
この人いまさらっととんでもないこと言ってる。
しかも平然とした顔で、再びホッチキスでプリントを止めながら。
それはとても告白されているとは思えないシチュエーションで。
「え、本気?」
何かの間違いかもしれないと聞き返してみても。
「うん、けっこー本気」
……どうやら聞き間違いではないみたいなのはたしか。