天ヶ瀬くんは甘やかしてくれない。
パチっとホッチキスの芯が止まった音と、自分の中でバクバク動いている心臓の音がふたつ重なって聞こえる。
「冗談にしか聞こえない…」
「なんで?だって俺のこと好きにならない自信あるんでしょ?」
「う、うん」
「んじゃ簡単なことでしょ。俺は基本めんどーなこと嫌いなの。だから、俺に興味無い子彼女にすればいろいろ楽じゃん?」
あぁ、なんだそういうこと。
わたしみたいな物珍しい変わり者は
いないと。
少しでも期待した自分がバカみたい。
もしかして、ほんの少しでもわたしに対する気持ちがあってそんなこと言ってくれてるのかもしれないなんて。
……バカみたい。
これじゃ自分がバカにしていた彼女たちと一緒じゃん。