天ヶ瀬くんは甘やかしてくれない。



そして、しまいには。


ゆっくりと、首を縦に振ってしまったんだから。


やってしまった。もうここまで来たら取り返しがつかないのに。


「じゃあ」


また、近づいてきて。


今度は耳元ではなくて、

整った綺麗な顔が真っ正面。


唇が触れるまであと数センチ


「こーゆーこともするから」


それは不意に、突然で

だけど、動きはとてもゆっくりで。


頬杖をついた手とは反対の方の手が
器用に顎に添えられて


軽く身を乗り出して……


吸い込まれるように、柔らかい感触が唇を包み込んだ。


1度目のキスはふたりっきりの放課後の教室だった。

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