天ヶ瀬くんは甘やかしてくれない。



「だ、だい……じょう……っ!?」


こんなこと、前にもあった。

キスされたのかと思うくらい近い距離。おでこをコツンとぶつけてきた。


「ん、熱はだいぶ引いたね」

「っ、」


やめてほしい。むやみにそんなふうに近づいてこないでよ…心臓に悪いから。

さっきから胸の鼓動がおさまりそうにない。


「あ、あの……ち、近い…です」

「……なんで敬語?」


「な、なんとなく……です」


「……なにそれ。アイツはよくて、俺はダメなわけ?」

「え……?」


何を言ってるの?と聞き返そうとしたら、タイミングよく天ヶ瀬くんのスマホが震えた。


画面を見て、誰かからのメールと着信を確認して。


「……もも、ちょっと来て」

と、言われて、何も返せず、ただ手を引かれて。

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