天ヶ瀬くんは甘やかしてくれない。



特に何も会話はせず、お互いの家まで着いてしまった。

ここで、わかれるはずだったのに。


「もも……」

家に入ろうとするわたしを引き止めて、抱き寄せられた。


やっぱり何かを感じ取られてしまったに違いない……。


前まで、少しずつ愁桃への気持ちが強くなっていたはずなのに

あの、一度の天ヶ瀬くんとのキスで
気持ちが一気に持っていかれてしまった……。


やっぱり、わたしはどこまでも最低だ。

こんなあっさりと、気持ちが転んでしまうなんて……。


『好きでもない相手と一緒にいても自分が苦しんで、相手を傷つけることだってね』


星川くんに言われた言葉が現実になってしまっている。


何も言わず、抱きしめる力が緩められ、愁桃の顔が近づいてきて、あと少しで唇が触れそうなところで


……とっさに拒んでしまった。

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