天ヶ瀬くんは甘やかしてくれない。
天ヶ瀬くんのホントの気持ち。
「はぁ……」
ある日のお昼休み。
ため息をついて、窓の外を眺めていたら、花音が心配して話を聞いてきた。
「どうかしたの?最近のももずっと浮かない顔ばっかりしてるけど」
ダブルデートをしてから数日が過ぎた。愁桃はわたしといつもと変わらず接してくれているけれど、どこか違和感がある。
天ヶ瀬くんとは、相変わらず何も話さず。
なぜあのときキスをしてきたのか、理由もわからず。
花音には、天ヶ瀬くんと別れたこと、愁桃と付き合い始めたこと全て話してはいるけど、あまり深くは話していない。
話すといろいろ複雑だし、心配をかけてしまいそうで。
「愁桃くんとうまくいってないの?」
「……う、ううん。そんなことないよ」
これ以上何かを聞かれると、答えられるような気がしなくて、お弁当に手をつけて、話題が変わるのをただ待つことしかできず。
結局、花音も深く聞いてはいけないと察してくれたのか、それから特に何も聞かれることはなかった。