天ヶ瀬くんは甘やかしてくれない。



***


━━放課後。


今日は愁桃が委員会の仕事で居残りなので、ひとりで帰ることになった。

なんだか今日はいつもと違う帰り道で帰りたい気分になり、遠回りの道のりを選んだ。


学校から出て、大きな交差点があり、そこには歩道橋がある。

昔、中学校のときはこの歩道橋が通学路でよく通っていたのが懐かしい。


そのまま、そこを通って帰ろうと歩道橋の階段をのぼっていたとき。


上を見上げたら見覚えのある、後ろ姿を見えて、ちょうどわたしと同じように階段をのぼっているところだった。


「あ……」と、思わずわたしが声を出して、その声に気づいて、後ろ姿がこちらを振り返った。


そのとき、驚いた顔がこちらを見ていて、そのまま身体のバランスを崩したのが見えた。


「あ、危ない!!」

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