天ヶ瀬くんは甘やかしてくれない。
とっさに目の前から落ちてくる身体を受け止めるのに必死で、自分のことなんか気にしていなくて。
なかなかの高さから落ちてきた身体を受け止めるのは、力がそんなにないわたしには厳しくて
受け止めたとき、自分の身体のバランスを保つのが難しくて、手すりをグッとつかんだと同時に手首をひねってしまった。
痛さはあるけど、落ちることを防げた。
もし、わたしが受け止めることができなかったら、2人そろって階段から落ちていたと思うと恐ろしい。
「よ、よかった……。ケガしてないですか?」
わたしがそう声をかけると、不満そうな顔でこちらを睨んでいた……唯乃さんの表情をとらえた。
そう、まさかこんなところで偶然に会うなんて思ってもいなかった唯乃さんがいたのだ。
向こうもわたしがいることに驚いてしまったみたいで、バランスを崩してしまったみたい。