天ヶ瀬くんは甘やかしてくれない。



ってか、わたしが手首ひねったの気づいてたんだ……。

唯乃さんの身体と自分を支えるのに握った手すりをうまくつかめなかったのが原因だ。


すぐに湿布を貼ってくれて、軽く包帯を巻いてもらって、手当てをしてもらえた。


わたしが手当てをしてもらってる間、唯乃さんはスマホを持ってどこかへ行ってしまった。


「よし、これでいいかな。あまり痛かったらまたここにおいで。娘を助けてくれて本当にありがとうね」


「い、いえ。そんなお礼を言われるようなことしてないです…」


すると、唯乃さんのお父さんは、ハハッと笑いながら。


「たぶん、唯乃にとってキミはとても大切な子なのかな?」

「え……えぇ?」


いやいや、そんなわけ。
むしろすごい嫌われてますけど。なんてことは言わないほうがいいと思って黙るけど。

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