天ヶ瀬くんは甘やかしてくれない。



まさかそんなわけない。

だって、わたしは唯乃さんにとって天ヶ瀬くんを取ろうとしていた存在で。

今は天ヶ瀬くんが自分の元に戻ってきて、わたしが愁桃と付き合ってることに満足してるんじゃないかって思う。


「そういえばお名前聞いてなかったね。よかったら教えてくれるかい?」

「え、あっ、浅葉ももです」


「ももさんか。ちょっとわがままな娘だけど、これからも仲良くしてやってね?」

「あ、はい……」


いや、なんではいって返事しちゃってるのって、心の中で自分に突っ込みを入れる。


ここで、用事を済ませた唯乃さんがこちらに戻って来た。


「それじゃ、あとは2人でね。じゃあ、またね、ももさん」と、最後まで唯乃さんのお父さんはいい人だった。


そのまま唯乃さんに待合室に連れて行かれ、ソファーに2人で腰を下ろした。

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