天ヶ瀬くんは甘やかしてくれない。
そう、そこに偶然いたのは、
黒の学ランに、真っ黒の髪をした男の子。
きっと、わたしと同じ中学生。
「その子泣いてんじゃん?ねー、おじさん?」
「チッ…!!」
その男の子のお陰で、その人はバスから逃げるように降りていった。
そして、肝心のわたしは一気に安心したのか、なんとその場で気を失ってしまった。
次にわたしが目を覚ましたのは、とある場所の保健室だった。
「ん……」
「あら、目が覚めたかしら?」
真っ先に目に入ってきた白い天井と、柔らかい女の人の声。
「あ、あれ…わたし……って、ここどこですか?」
「ん?ここは、あなたが受験する予定の高校の保健室よ?」
「へ?」
え、あっ、そうだ。
わたし今日入試で、それでこの高校に向かって、バスに乗って……
変な人がいて、男の子が助けてくれて……
そのあとどうなったんだっけ?