天ヶ瀬くんは甘やかしてくれない。

「もっと慣れてるのかと思ってたけど」

「な、慣れてるほうがよかった…っ？」


自分で聞いて失敗したかもしれない。
天ヶ瀬くんはきっと、女の子と手を繋ぐとか、キスをするなんて簡単なことで。


それに対して、わたしは全部天ヶ瀬くんがはじめてて、慣れてない。

もしかしたらそういうの無理とか言われたらどうしようって不安になった。


「……どーだろ？」

「こ、答えてよ……っ」


「慣れてるほうがいいって言ったら？」

「な、慣れるようにがんばる…」


「ふっ、ももには無理でしょ」

「が、がんばるもん…！」


「じゃあ、慣れるために頑張ってみてよ」

「へ……？」


さっきまでわたしの肩に頭を乗せていたのに

気づいたら、元に戻っていて。


「こっち向いてよ、もも」

言われた通り、天ヶ瀬くんのほうに身体を向けた。