天ヶ瀬くんは甘やかしてくれない。
パッと後ろに振り向こうとしたけど、そんな隙はなくて、身体を壁に押さえつけられた。
「へー、ほんとに来たんだ?」
その低い声に反応して顔を上げると、
大柄な1人の男の人がニヤッと笑いながらこちらを見ていた。
両耳にたくさんついているピアス。
校則をまったく守っていない金髪に、だいぶ着崩した制服のネクタイの色から先輩だということがわかった。
わたしの手首をグッとつかむ。
「まさかあんな手紙で来るなんてね。キミ噂通り軽いんだねー」
このとき、自分がバカだったって後悔した。
あれだけ花音や天ヶ瀬くんに怪しいって言われたのに。
疑いもせずに、こうやって来てしまって、いくらバカなわたしでもこれが危険な状況ってことはわかる。