天ヶ瀬くんは甘やかしてくれない。
「あのさー、人の彼女に何しよーとしてるわけ?」
声が聞こえて、閉じて目を恐る恐る開けると……。
「あ……まがせ……くん…っ」
絶対助けになんか来てくれないと思っていた天ヶ瀬くんがいた。
安心して、我慢していた涙が溢れてきた。
さっき何かあっても助けないって言ってたのに……。
「……聞いてんの?早く離してくれない?」
「後輩のくせに生意気じゃねーか」
ど、どうしよう……。
まさかケンカになったりとかしないよね…?
「人の彼女に手出そうとしてる飢えてるやつを先輩だとは思えないですけど」
一瞬、つかまれる力が弱まったので、その隙をついて、天ヶ瀬くんの胸に飛び込んだ。
ギュッと抱きしめてくれて、優しい温もりに包まれた。